| 見どころ
| 主な出演者
| 評価
| 感想
| あらすじ(ネタバレあり)
見どころ
ストーリーとしては、イージス艦と貨物船との衝突事故と町の環境汚染といった事案が複雑に絡んでいること、TVドラマでお馴染みのキャスト以外の豪華キャストが繰り広げる名演技、非日常の法廷シーンで起きる人間模様が堪能できます。加えて人の葛藤、一度走り出した大きな流れを質すことや良心と向き合うことの困難さといった人の生き様についても考えさせられ、ラストは、序盤からは予想できない展開の映画になっています。
主な出演者
竹野内豊、黒木華、斎藤工、山崎育三郎、柄本時生、西野七瀬、田中みな実、桜井ユキ、尾上菊之助、吉田羊、宮藤官九郎、平山祐介、向井理、小日向文世 他
評価
★★★★☆
感想
入間みちお(竹野内豊)の新たな赴任先である岡山県秋名市の裁判を通じて、真相究明のために職権を発動し、イージス艦の衝突事故について調査をするものの、立ちはだかる国家権力の壁に屈するところから始まります。庶民から見ると、機密保持、国家権力行使という、ある種理不尽な取扱いを目の当たりにすることになるが、みちおはその裏にある、どうしても隠したい真実の究明を諦めずに飄々とやってのけます。
一方、坂間千鶴(黒木華)は、みちおの赴任先の隣町で裁判官の他職経験制度の一環として弁護士業に従事し、人権派弁護士である月本信吾(斎藤工)の調査を手伝いながら、徐々にその人となりに惹かれていくことになります。ところが現実は厳しいもので、月本は不法行為をネタに金品を要求する法律ゴロであることが分かり、坂間は大きく落胆するだけでなく、月本に嫌悪感を抱くことになります。法律は全ての人に公平・公正ではなく、限界があることから、誰しもがぶつかる壁をどのように乗り切るかを試されることになります。
月本は魂を売った法律ゴロなのか、それとも弁護士としての矜持を持ち続けているのか、このテーマは、この映画の全編を通じて、いろんな場面で問われることになります。人の命を守る、土地を守る、国家(機密)を守る、大義の裏で犠牲になるものは・・・その犠牲を払ってまでもやり遂げる必要があるのか?他に選択肢はないのか?現況を軌道修正することは出来ないのか?誰もが経験する葛藤を描いており、終盤では時には残酷な結末の受け入れも避けては通れないことも描いています。
キャストの演技で目を見張るのは、序盤はイージス艦と衝突した貨物船船長の妻、島谷加奈子を演じる田中みな実、中盤・終盤では、町の医師であり、シキハマ株式会社の産業医でもある小早川悦子を演じる吉田羊、それと全ての事実を知って涙する坂間千鶴を演じる黒木華の女優3人組です。俳優陣は、影のある弁護士月本信吾演じる斎藤工と悪徳政治家と思いきや高邁な思想を持った防衛大臣・鵜城英二を演じた向井理を挙げます。もちろん、メインの入間みちおの竹野内豊は言わずもがなです。
この映画は決してハッピーエンドではありませんし、鑑賞後の爽快感もありませんが、明るい将来への希望を持てる映画の一つと感じました。シリアスな場面だけでなく、みちおと坂間の掛け合いで思わず笑ってしまうような場面も散りばめられており、映画館に足を運んで観るに値する作品と思います。
あらすじ(ネタバレあり)
入間みちお(竹野内豊)が、東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称:イチケイ)を去って2年。岡山に異動したみちおが担当することになったのは、島谷加奈子(田中みな実)が史上最年少防衛大臣・鵜城英二(向井理)に包丁を突きつけたという傷害事件。事件の背景には、不審点だらけのイージス艦と貨物船の衝突事故があった。だがイージス艦の航海内容は全て国家機密で、みちおの伝家の宝刀「職権発動」が通用しない難敵。
一方、坂間千鶴(黒木華)は、裁判官の「他職経験制度」で弁護士になり、配属先は奇しくもみちおの隣町。そこで出会った人権派弁護士・月本信吾(斎藤工)とバディを組み、人々の悩みに寄り添う月本と行動している内に地元有力企業である「シキハマ株式会社」の環境汚染の実態にたどり着く。ところが、正義の弁護士と思っていた月本は、シキハマから金銭を受け取る法律ゴロであることが分かり、坂間は怒りに震えるが、環境汚染の真実を明らかにしようと、健康被害の出た子供を持つ親の民事裁判を担当することになる。この裁判の裁判官はみちおであった。
この裁判が始まると、原告の男性のラーメン店には石が投げ込まれ、坂間のアパートは放火されるという脅しが日常化する。月本は坂間に次は命が危ないからとあきらめるよう説得するが、坂間は聞く耳を持たない。そんなある日、月本が階段から突き落とされ殺される。月本は亡くなる前に2枚の写真をみちおに送っていた。金を受け取っても何かを掴んでいるから、この町に残り、それが原因で月本は殺されたと坂間は思った。イチケイの駒沢義男(小日向文世)は月本について、正義感にあふれた弁護士だったとみちおに語っていた。
みちおは裁判において、証人として島谷加奈子を呼び出す。そこで、イージス艦衝突事件の真実を話す。みちおは無人島に行き、そこの定点カメラを確認した際、イージス艦と貨物船の衝突事故が映っていて、貨物船が航路を外しイージス艦に衝突したことを伝える。シキシマが汚染した土を運搬中に土から有害物質が漏れだし、船員も夫の島谷船長も倒れてしまった。さらに島谷船長は、シキシマの環境汚染を知っていたことも話すと、夫がその隠ぺいに関わっていた事実を知り、加奈子は複雑な心境になる。
坂間は小早川悦子(吉田羊)に証言を求める。医師である悦子は健康被害の事実を知っていたはずと問い詰める。悦子はシキハマの環境汚染の事実を隠そうとしていたのは、町民たち自身であること、町の存続、町民の生活のためにやむを得なくやったこと、他に手段がなかったことを涙ながらに訴える。さらにこの事実が明らかになったのは、坂間が弁護士として赴任してきたから、坂間がこの土地に来なければ良かったと言い放つ。みちおが下した判決は、シキハマが原告に1千万払うこと、環境汚染に対して適切な処置を行うこと。
裁判後、パトカーに乗る悦子は、坂間は悪くない、悪いのは私たちだから、胸を張れ!と坂間に声をかけた。その後事実が次々と明らかになる。月本を死に至らしめたのは、シキシマの顧問弁護士である三田村武晴(尾上菊之助)であった。亡くなった島谷船長、シキシマの工場長木島昌弘(平山祐介)、医師の悦子、悦子の夫の小早川輝夫(宮藤官九郎)、弁護士の三田村は、この土地の出身であり、この町のために働くことを子供の時に誓い合った仲間だった。(月本が送ってきた2枚の写真に5人がシキハマの社員と写っていた)月本は隠蔽された真実に坂間がたどり着くことを想定し、工場長や悦子たちに隠蔽事実を公表するよう説得していた。その結果、月本は、三田村に殺されることになった。坂間は、この事実を知り、悦子達4人の弁護を引き受けるつもりだとみちおに語った。
鵜城防衛大臣とみちおが再会する。鵜城は衝突事故当時にイージス艦には自分も乗っていて、開発中のミサイルを搭載していたため、それを公にするわけにはいかず、隠し通したかったことを告げる。その後、彼は事故の真相については語らず、加奈子を追い詰め、傷害事件になった責任を取り、大臣を辞任した。
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